七月も半ばを過ぎたと言うのに、まだ梅雨明け宣言は出ていない。
ベッドから少し体を起こしてカーテンを開けた俺は、窓を濡らす霧雨を目にし、ため息をつきつつ再び寝転がった。
「また雨かよ」
シトシトとしつこく降り続ける雨。梅雨は、俺にとって嫌な季節だ。
雨が、ましてジメジメとした日本の梅雨が好きな奴なんざそうそういないだろう。そう思って何気なく言った一言だったのだが、彼女はそうではなかったらしい。
「私、梅雨って結構好きだけどなぁ」
そう言って、仰向けに寝たまま鉛色の空を窓越しに見上げた。
梅雨が好き? 変わった奴だな。
そう思う俺に構わず、彼女は話を続けた。
「正確に言うと、梅雨寒ってのが好き。ちょっと肌寒くてさ」
そういや、こいつ暑いの嫌いだったっけ。梅雨前の暑かった日、つないでいた手を「あっつい!」 と言って振りほどかれた事を不意に思い出す。あれは、正直ちょっとショックだった。
「ベッドでこうやって包まってるのがすごーく幸せなんだよねー」
彼女は言って、もぞもぞとタオルケットの中にもぐりこんだ。
正確に言うと、タオルケットをかけた俺の腕の中に。
「そういうのは梅雨が好きなんじゃなくて、布団でゴロゴロするのが好きって言うんじゃない?」
普段素っ気無い彼女が甘えるように擦り寄ってくる。その嬉しさをごまかすように、俺は笑いながら言った。
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